「中小企業事業再編投資損失準備金制度」の拡充【2024年度税制改正】
■ 背景:中小企業の成長促進に向けた税制支援
2024年度税制改正では、日本の雇用の約7割を担う中小企業の成長支援と、労働生産性の高い中堅企業の育成が大きなテーマとなりました。
その一環として、「中小企業事業再編投資損失準備金制度」の適用期限を3年延長し、制度内容も大幅に拡充されることとなりました。
■ 制度の概要:M&Aに備える“損失準備金”とは?
本制度は、以下のような条件でM&Aを行う中小企業に対して、リスクに備える準備金の損金算入を認めるものです。
▷ 主な要件
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経営力向上計画の認定を受けた法人が
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他社株式を取得(M&A)し
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その取得価額の最大70%までを
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損失に備える準備金として積み立てた場合
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その金額を損金算入できる
■ 制度拡充の背景:中小企業M&A特有のリスク
中小企業のM&Aでは、デューデリジェンス(財務・法務・事業調査)にかけられるコストが限られているため、
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簿外債務
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偶発債務
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事業リスク
などの見落としリスクが大きいという課題があります。
このような実態を踏まえ、成長意欲のある企業がM&Aを複数回実施しやすくするための環境整備として、制度が以下のように拡充されます。
■ 拡充内容のポイント
拡充項目 | 現行制度 | 改正後 |
---|---|---|
準備金の積立上限 | 取得価額の70%まで | 最大100%まで |
据置期間 | 5年間 | 10年間 |
■ 適用対象と条件
この制度の拡充は、改正産業競争力強化法の施行を前提としています。
対象となるのは、以下の条件をすべて満たす法人です。
▷ 適用条件
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青色申告書を提出している法人
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「特別事業再編計画(仮称)」の認定を受けている
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認定期間:改正法施行日 ~ 2027年3月31日まで
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他の法人の株式等を「購入によって取得」し、事業年度終了日まで継続保有
■ 損金算入できる準備金の上限
認定を受けた再編計画に従い、取得した株式等に対しては、以下のように積立上限が設定されます。
株式の区分 | 損金算入できる準備金の上限 |
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最初に取得した株式等 | 取得価額の90%以下 |
その他の株式等 | 取得価額の100%以下 |
■ 準備金の取崩しに関する注意点
準備金として積み立てた金額は、以下のようなケースで取り崩しが必要となります。
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株式等を全部または一部売却した場合
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株式等の帳簿価額を減額した場合
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その他、規定された事由に該当した場合
💡 制度利用時には、会計処理や税務処理のタイミングにも注意が必要です。専門家と連携し、計画的な活用をおすすめします。
■ まとめ:M&Aを活用した成長戦略を後押し
この制度の拡充は、中堅・中小企業が事業承継・成長戦略の一環としてM&Aに取り組みやすくなるよう後押しするものです。
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将来のリスクに備えながら
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積極的に事業再編・業務提携を進める企業にとって
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非常に実務的なメリットが大きい制度
です。
2027年3月末までの時限措置であるため、活用を検討されている企業は、早めの準備と計画立案が重要です。
詳細については、下記サイトをご確認ください。
▼ 制度の詳細・申請サポートをご希望の方へ
制度の活用に関する詳細なご相談、計画策定の支援、M&A実行支援などについては、当社までお気軽にお問い合わせください。
(注意事項)
上記の記載内容は、令和7年2月17日現在の情報に基づいて記載しております。今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。