M&A対価の損金算入が拡充—7割から最大10割へ

M&A

M&A損失準備金の損金算入制度とは

フロー図

(出典:中小企業庁:中小企業事業再編投資損失準備金(中堅・中小グループ化税制)より抜粋)

令和6年度税制改正により、「中小企業等経営強化法」に基づく経営力向上計画の認定を受けた中小企業が対象となる、M&Aにおける株式取得価額10億円以下の70%までの損失準備金の損金算入制度が、3年間延長されました。ここで、中小企業とは「資本金1億円以下、または従業員数1,000人以下の法人。大規模法人関連法人は除く」となります。

新たに創設された併存枠とその要件

これと並行して「産業競争力強化法」の特別事業再編計画の認定を受けた中小企業や中堅企業(従業員数2,000人以下)に対して、M&Aで取得する株式価額が1億円以上100億円以下の場合、その90%以下の準備金積立額も損金算入できる新たな制度が創設されました。

さらに、同じ認定を受けた企業が別のM&Aで1億円以上100億円以下の株式を取得する場合には、その取得価額の100%以下の準備金を積み立てることで、全額損金算入が認められます。

従前の枠との違い:取崩しのタイミング

従前の制度では、積立額は5年経過後の事業年度から5年間にわたり均等に取崩し、益金算入されていましたが、新制度では、積立額が10年経過後に同様の方法で益金算入されます。

新制度適用に必要なM&A実績

新制度を適用するには、過去5年以内にM&Aの実績があることが要件となっており、この要件は「中小企業等経営強化法」に基づく7割損金算入の適用実績に限らず、他の企業の経営支配や経営資源の取得経験も含まれます。

追加された保険契約に関する要件

さらに、M&A損害保険契約を締結している場合、この損金算入制度は適用除外となります。

また、事後に保険契約を締結した場合、過去に計上した準備金も含め、全額益金算入が必要となります。

ただし、過去に締結された保険契約はこの対象外です。

この改正により、M&Aにおける税制上の優遇措置が拡充され、中小企業や中堅企業にとってより有利な条件でのM&Aが進めやすくなっています。

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