買収した事業の価値はいつまで続く?

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事業買収

のれん価値とは

九州をはじめ、日本全体でM&Aや事業売却が脚光をあびています。

企業が事業の多角化や事業拡大をねらい、他の会社の事業買収をしたとき、時価純資産価額を超えて対象事業を評価することで生じた「のれん」といいます。この「のれん」の価値は、いつまで継続するのでしょうか?

基本的な考え方

のれんには譲渡した側の経営者が長年築いてきた、社会的な信用、得意先、取引先との契約関係、従業員のスキル・経験など、様々な価値が内包されていますが、消費者のニーズの変化や市場の変化等に応じてのれんの価値も減価し、自社の事業に吸収されていきます。

そこで、こののれんの償却は、会計・税務上、次のように扱われています。

会計上の償却期間

日本の会計基準では、のれんは、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたり毎期、規則的に償却します。

これは、取得事業から生じる収益と償却費用とを対応させることができること、のれんの減価を合理的に予測することが困難であること等の考え方によります。

また、のれんの未償却残高は、減損処理の対象となり、投資額の回収を見込めないときは、のれんの減損処理が求められます

ちなみに、国際財務報告基準(IFRS)では、のれんは償却せず、取得原価のまま評価されますが、毎期、減損テストを行い、減損が認識された場合は、減損処理を行います。

税法上の償却期間

法人税法では、のれん(資産調整勘定)は、60か月(5年)の月割り均等償却です。償却期間が会社の見積りで任意に設定されることを回避し、所得に与える影響を中立にさせています。

なお、償却に当たり、損金経理要件は課されておらず、会計基準が求める減損処理も法人税法では認められていません。

のれんの価値を育てる

事業を承継した経営者は、買収した事業を自社の事業と融合・シナジー効果を発揮させて、のれんの価値を高め、投資額を上回る利益の獲得を目指します。

その意味からすれば、取得したのれんは、投資の回収を見込む期間内で早めに償却を行い、自社の新たなのれんとして育てていくべきものと考えられます。

事業買収には上記のような考えも取り入れていくことが重要です。

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